ごあいさつ

  従来、サービスを利用する側と提供する側は完全に分かれていました。そのデザインも、提供側が行ってきました。共同創造とは、この暗黙の了解を覆し、「サービスの利用者が、それをデザインするのに最適な人材だ」という原理に立ち返り、利用者と提供者の共同で作り上げていくことです。

 これを研究にあてはまると、「サービスの利用者が、研究をデザインするのに最適な人材だ」という原理に立ち返り、利用者と提供者の共同で研究を作り上げていくのが、研究の共同創造です。地域で暮らす生活経験から生まれた自助のプログラムである当事者研究は、当事者が、自らの研究者性に気づいていく営みとも言えます。一方、研究者も、自らの当事者性に気づくことが求められます。当事者性に気づいた“研究”者は、共同創造によって再構築された“研究”を行う当事者となります。

 日本統合失調症学会は、第8回大会(2013)を当事者研究の発祥地浦河で開催することをきっかけに、共同創造への一歩を踏み出そうとしました。その後の大会でもテーマやプログラムにさまざまな工夫がなされました。しかしこの歩みを振り返りますと、研究の発表には研究者が、当事者向けのセッションには当事者が、分断して参加する傾向にありました。当事者・家族の声を聴くと、「まだまだ敷居が高い」「忙しい中勉強しに来ている医者はまだいいけど、聴きに来ていないような医者が、地域で当事者を泣かせているのよ」と耳が痛い状況です。一方、「この学会には優れた研究発表がなくなってしまった、もう来たくない」という研究者の声も無視できません。そもそも学会とは、研究者が研究を発表しあう自助グループです。

 このような背景から、第16回大会は、共同創造を通じて研究を“研究”に再構築していくための、第一歩としての対話の場と考えております。そのために、ささやかな挑戦を試みます。

 内容面では、大会プログラムアドバイザリーボードとして、当事者研究の専門家、統合失調症以外の疾患のある方の家族、脳科学研究者、など多声性を生み出す場を作りました。英国のジェームス・リンド同盟が行っている「研究の共同創造」の取り組みを発展させ、「統合失調症“研究”についての10の優先事項」を大会当日に発表することを計画しています。これから1年間をかけて、過程を透明化しながら、多様な立場の方による討論をかさねていきます。

 運営面では、治療や回復のあり方について利益相反のありうる団体のランチョンセミナーに支援を求めません。他方、サービスは簡素となることをご理解ください。

 オンライン開催でプログラム数が限られることを補うため、医学雑誌の誌面を活用して、「統合失調症について、重要だが解明されていないこと」を当事者と専門家が共著になって解説する総説集を開催に合わせて出版します。

(協力:第16回大会プログラムアドバイザリーボード:石井綾華・上田祐紀子・熊谷晋一郎・佐々木理恵・島本禎子・田尾有樹子・三ツ井幸子・宮本有紀・森美智代・柳下祥・山口創生)

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